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妻が遺伝性乳がん卵巣がん症候群と診断された時、夫は【我が家の体験記 前編】

身体のこと

こんにちは。

私はHBOC症候群と診断されています。

こちらの記事を参考にまた読んでいただけると嬉しいです。

 

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今回、夫側の意見で記事を書いてくれました。

参考にしていただけると嬉しいです。

 

こんにちは。ポコ夫です。

私の妻(夢嫁といいます。)はHBOCと診断されています。

HBOC(エイチボック)をご存知でしょうか。

Hereditary Breast and Ovarian Cancer 

それぞれの単語頭文字を合わせたもので、 

遺伝性乳がん卵巣がん です。

しかし、夢嫁の体内に今、がんはありません。

どういうことか。

3年前にがんと診断されて亡くなった義父(妻の実父)が残してくれた遺伝子データをもとに妻が遺伝性がんの検査をうけたところ、義父と同じ遺伝性がんの発症リスクが高いことがわかったのです。

つまり、遺伝子検査が陽性であり、その時点で

「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」と診断されたのでした。

この記事ではHBOCの診断を受けた夫婦が何を感じ、考え、今後どのように対応していくのかを記録しています。

記事が長くなってしまうため、前編と後編に分けて記録していますので、後編も是非お読みください。

今後遺伝子検査はますます研究が進み、広がりを見せると考えています。

HBOCは著名人が公表したこともあり、有名な病名です。

その他にも遺伝子の病的バリアント(遺伝子の変形)とがんが関わる遺伝性がんはたくさんあると考えられています。

この記事は今後研究が進み、明らかになっていくであろう遺伝性新生物(がん)と診断され、あるいは遺伝子検査陽性となった方の励みや参考になることを望んで書いています。

情報共有や遺伝性がんに対する夫婦の論理的なリスク対策の一助になれば幸いです。

妻が遺伝子検査を受けた理由

義父(夢嫁の実父)は4年前、原発不明がんと診断されました。腹膜にがんが播種しており、診断された頃にはすでに全身がんと同義の状態でした。

 我々家族はもちろんのこと、義父本人は悲しみに暮れながらも懸命に治療をうけましたが、残念ながら1年半戦いぬき、家族に見守られながら逝去されました。

原発不明がんとは、がんが原発した臓器がわからないがんであり、がん全体の5%ほどの割合で診断されているそうです。

原発不明だと手術が困難であることはもちろん、抗がん剤治療も難しさを増します。抗がん剤はがん細胞のある臓器によって抗がん剤の種類を選別されるからです。

闘病中、義父はがんの正体をつかもうと様々な検査を受けました。そのうちの一つが遺伝子検査でした。

遺伝子検査では、患者の遺伝子に発がんリスクが高い病的バリアント(変形)があるかを検査するものです。義父のBRCA1という遺伝子に病的バリアントが確認されました。

BRCA1及びBRCA2に病的バリアントがある被検者はHBOCと診断されます。

BRCA1に病的バリアントがある人

乳がん

卵巣がん

前立腺がん

膵臓がん  の発症リスクが高くなります。

どれくらい発症リスクが上がるかと言うと、BRCA1に病的バリアントがある人はそれがない人と比較して、

女性の乳がん 46〜87%(男性 1.2%)

卵巣がん   39〜63%

前立腺がん  29%

膵臓がん   1〜3%    高くなります。

どの遺伝子に病的バリアントがあるかで、がん発症リスクが上がる臓器は異なります。

また、BRCA2に病的バリアントがある場合も数値が異なります。

詳しくは JOHBOC(ジョーボック)と検索してみてください。

一般社団法人 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構から正しい情報を確認いただけます。

そして、病的バリアントは2分の1の確率で子に遺伝します。

義父が陽性とわかった時点で、夢嫁もHBOCである可能性が発生したのです。しかも陽性の確率は50%です。

遺伝子検査は発症していない人にとっては任意検査です。

健康保険も使えません。全額自己負担になります。

ですから家族が陽性となったとしても、その費用を考慮すると検査を受けない選択をする方が多いと聞きました。

義父が他界し、ちょうど1年が経とうとしていたところ、妻が年に1回の乳がん検診にいきました。

その時にお世話になった乳腺外来の男性医師がHBOCに関する知識を有している先生でした。

家族歴を聞いた先生から

「遺伝子検査は何も遺伝歴の情報がない人がスクリーニング検査に用いると何十万円もするけど、お父さんがBRCA1/2というデータを残してくれているのならBRCA1/2のみ調べてみることもできる。それなら費用も大きくはないはず。私なら検査を受けるよ。」

と夢嫁に勧めてくれました。

その時は

「じゃ受けてみよっか。」

「お父さんが残してくれたデータがもったいないしね。」

と軽い気持ちで決心しました。

何も情報がない人なら何十万円もかかる検査を少額でできるならラッキー。がんリスクわかるならそれ相応の対応ができるしねって考えていました。

この考え方は浅はかでした。

そんなに気軽なものではなく、遺伝子検査は人によっては人生に大きな影響を与えるものだったのです。

ゲノム診療科教授との遺伝子検査前カウンセリング

 夢嫁が電話で遺伝子検査を受けたい旨を医師に伝えると、県内大学病院でしか検査ができないことがわかりました。

大学医学部附属病院ゲノム診療科です。

第1印象は「カッコいい名前」でした。

さっそく夢嫁が大学病院に状況を話すと、検査の前にカウンセリングが必要であることがわかりました。

さっそく直近かつ都合のいい日にカウンセリングの予約を入れました。

あいにく私は仕事の日であり、夢嫁1人でカウンセリングへ向かいました。

カウンセリングはゲノム診療科の教授以下4名ほどの医師が迎えてくれました。教授からは

「まさか、お一人ですか?」

と困惑顔で聞かれ、この時点で夢嫁は

「あっ、ちょっと温度感ズレてたな。気軽なものじゃないんだな。」

とことの重大さに気づいたそうです。(私も反省)

カウンセリングでは最初、上記の内容のように遺伝子パネル検査に関することと、HBOCに関することの説明がありました。

その後本当に遺伝子検査を受けるのか最終確認があり、検査自体はアメリカに検体を送って分析が行われるため、結果が出るまで1ヶ月ほどかかると説明を受けました。

これでカウンセリングは終わり、その内容を共有してもらった私は夢嫁を1人で行かせてしまったことを深く反省しました。

説明をうけて検査の重大さが少し理解できたからです。

もし陽性だったら夢嫁はかなり高い確率で発がんする。

もし発見が遅れたら…

これまで私は平均寿命からみて男性の私が夢嫁より先に他界することが普通と考えていました。

夢嫁が先に他界する可能性が上がる。

夢嫁が、妻が他界するのを絶対にみたくない。

検査陰性であってくれ。

もし陽性なら3人の子どもにそれぞれ、2分の1の可能性で遺伝子の病的バリアントが引き継がれている。

そんなの嫌だ。そんなこと今まで考えたことがなかった。

これが遺伝子検査の重要性、内容を知った私の感想です。

悲観的なことばかり考えていました。

しかし結果を知るまでは1ヶ月もあります。

しだいに私は

「お義父さんと夢嫁はそんなに似てないからたぶん遺伝子検査も陰性だ。」

と感情に任せて根拠のないポジティブシンキングをするようになっていました。

正常性バイアスにより、

「夢嫁がまさか陽性のわけがない。」

と思い込むようにもなっていました。

冷静な思考ができていません。

検体採取から1ヶ月経過し、結果を聞きに病院へ行く日がきました。

検査結果は… まさかの陽性…

令和6年7月。検査結果を聞くため、私たち夫婦と夏休みに入った次女の3人で大学医学部附属病院ゲノム診療科のカウンセリング室へ向かいました。

定刻通りにカウンセリング室前で待っていると、ゲノム診療科の医師がカウンセリング室から招き入れてくれました。

入室と同時に動揺しました。

ゲノム診療科教授に加え、検査前カウンセリングよりも2名ほど多い医師団が私たちを待っていたのです。

この光景をみた瞬間、

「まさか。」

と察しました。

着座を勧められ、医師団と向かい合うと部屋へ招き入れた医師が話し始めました。

「検査結果が陰性であれ陽性であれ、ご家族で遺伝子検査のその後をお話されましたでしょうか。ご主人はどうですか?」

と私に話を振られました。

私は

「陰性ならあーよかったで帰宅するだけです。陽性なら、長生きしてもらうために検査を受けてもらったのですから積極的に予防治療を検討していきたいです。」

と話しました。

「わかりました。」

と頷いた医師は1枚の用紙を私たちに差し出しました。検査結果通知です。

結果をみた夢嫁は

「ある…」

と苦笑いの表情を浮かべたことを私は覚えています。

検査結果は陽性でした。

「BRCA1に病的バリアントが検出されました。」

と記載されています。 

私は夢をみているような感覚に襲われ、思考を整理することに必死でした。

落胆です。

医師からは 

「検査結果から奥様には遺伝性乳がん卵巣がん症候群と診断がされます。」

「今後の予防医療についてどの用にお考えですか?」

私は

「やはり長生きしてもらいたいので、できる検診はすべて受け、予防治療は積極的に検討してもらいたいです。」

と考えに変化がないことを伝えました。

医師

「お子さんのことはどうお考えですか?」

と質問があり、

私は

「やはり子どもにも全力で予防治療を注ぎたい。遺伝子検査は20歳になる頃を目安とし、全員受けさせたいと考えています。」

と答えました。すると教授から

「おとうさん(私のこと)、遺伝子検査結果はとてもデリケートです。検査を受けた方の中には子どもに遺伝するなら妊娠出産や、結婚を控えてしまう方もみえます。検査結果を受けたお子さんがその結果を重大に捉え、その子の人生に多大な影響を与えかねません。ですからどうか、お子さんの検査をどうするかは是非慎重にお考えください。その際、私たちゲノム診療科はもちろん寄り添わせていただきます。カウンセリング賀必要でしたらいつでもご連絡ください。」

とありました。

私はショックを受けました。教授の言葉に深く納得してしまったからです。

とてもデリケート。確かにその通りだ。私はまだ軽率だったのです。

同時に頼もしさも感じました。

あらゆることに対して私たち夫婦は運がよかった。

お義父さんが遺伝子検査を受けてくれていて、そのデータを残してくれていたこと。

お義父さんが住む県とは別の県に住んでいる私たちの地域の大学病院にゲノム診療科があったこと。

このタイミングで検査を受ける決断を夢嫁がしてくれたこと。

運だけではないですが、すべてに感謝できるように気持ちが落ち着いてきました。

この検査結果は悲劇ではない。

遺伝子の変形は先天的なもの。検査結果陽性は今発生したのではなく、今発覚しただけのこと。

これら全ては他でもない、夢嫁を生かすために集結した情報です。

お義父さんが最愛の娘を生かすために物事が展開したようにも感じます。

落胆した気持ちが前へ向かい始めました。

目の前にいるゲノム診療科と婦人科、乳腺科の混合医師団は、夢嫁を支え、力になるために来てくれています。とてつもなくありがたい気持ちになりました。

遺伝子検査の先にある予防医療について話を聞きたい。知った上でポジティブに検討したいと考えることができました。

ちなみにBRCA1/2の遺伝子パネル検査の費用は自由診療であり、自己負担は約4万円でした。

以上、後編に続きます。

後編はHBOCの予防医療、リスク低減手術の記録、手術を終えた現在の記録をお送りします。

是非お読みください。

 

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